◆想い出の山小屋 〜九州以外の山のお話〜
▼村営天狗山荘
白馬鑓ガ岳から不帰ノキレットに向かう
途中の天狗平に村営の天狗山荘があり
ます。
村営天狗山荘の周辺は高山植物の宝庫
です。
(雨天のため停滞・・・)
☆


1990年9月上旬、この年は山の会の女性2人が私達の北ア
ルプス遠征に同行したいと言うことで、計4人での賑やかな
遠征となりました。最初は別の目的地を決めていたのですが
初めて北アルプスに行く女性が一番楽しめる所はどこだろうと
考え、急きょ後立山連峰の白馬岳縦走に切り替えました。
夜行列車を利用して前日の朝、山麓の町に着いた私達は
初日から いきなり長い距離を歩いたのと高度障害が気になっ
て、2日目は軽めの日程にしました。その日の朝は のんびりと
白馬山荘を出発し、まずは近くの旭岳へ登りました。分岐まで
戻って来ると 村営頂上宿舎に ちょっと立ち寄り、それから、
杓子岳〜鑓ガ岳へと向かいました。大出原〜鑓温泉への分
岐を過ぎ、村営天狗山荘に午後1時45分に到着。お天気は
下り坂の気配、周りはガスって何も見えなくなっていました。
これから不帰ノキレット越えをするのには時間が少し遅いよう
です。迷いましたが4人の体調と足並みを考え、今夜はここに
お世話になることにしました。
村営天狗山荘は白馬岳から唐松岳へと縦走する際、難所と
される不帰ノキレットの手前の天狗平にあります。白馬岳一
帯でもこの辺りは高山植物がとても多く見られる所だそうで、
踏み荒らされないように夏山シーズン中には監視員が見張っ
ていると聞きました。シーズンオフの今、平日の山小屋は閑
古鳥が鳴いていました。
案の定、天候は悪化し やがて雨となりました。質素でこじん
まりとした静かな山小屋です。白馬山荘や燕山荘のような
贅沢な設備はありません。入って直ぐの食堂兼休憩室で
ストーブの暖かい炎を囲みながら長い時間を過ごしました。
シーズンオフと言うことで、おみやげや飲み物なども品切れ
が多く、特に楽しみにしていた缶ビール・酒類が全くなかっ
たのは大ショックでした。
翌日の3日目は天候の回復を期待していたのですが、ますま
す風雨が強くなり どうしようもありません。強行して出発する
ことも考えましたが、嫁入り前の2人の女性に もしもの事が
あったら大変です。(ん?)結局、この日も山小屋に停滞する
ことにしました。苦渋の決断でした。これほど時の流れが遅く
感じられた長い1日はありません。連泊なので宿泊費もかさ
みます。なるべく倹約に努めました。
ふと窓ガラスの外を見ると、風雨の中を2〜3人の人影が山
小屋にも立ち寄らずに縦走して行く姿がありました。その姿
を見て驚きました。

早朝、天狗ノ頭を過ぎ不帰ノキレットへと
向かいました。
透明の大きなビニール袋に頭と両腕が出るくらいの三つの穴を開けてポンチョのように被っています。
ちゃんとした雨具を持ってきていないのでしょう。靴はスニーカーでスパッツ代わりにビニール袋を被せてあ
ります。小さなデーバック程度のものしか背負っていません。まるで近所の低山を歩くハイカーのようでした。
『なんだ、あの格好は!あんな装備で北アルプスを縦走するなんて!』私達は絶句しました。
この日 山小屋には私達の他に確か2名ほどの宿泊者がいたように思います。そのひとりで、新潟から来ら
れたマ○タケさんと言う方と仲良くなりました。聞くところによると、白馬岳の高山植物に惚れ込んでいて、
毎年 花の時期になると山麓までマイカーをぶっ飛ばして何度も やって来るそうです。高山植物について
のお話を熱く語ってくれました。午後から雨も小降りになり退屈の虫が鳴いていた5人は雨具を着用して天
狗平周辺をのんびりと散策することにしました。
マ○タケさんは丸刈り系のヘアースタイルで、一見すると【働く農業青年】って感じでした。気さくな方で、
私達を案内して いろんな事を教えてくれました。まだ生き残っていた高山植物の花々を幾つか見つけるこ
ともできました。最後に天狗ノ頭まで行き、つかの間の楽しいひと時を過ごしました。気がつくとお天気は
小康状態になっていました。今夜は気分を変えようと昨夜とは違う場所に布団を引きました。ガラガラの室
内は貸し切り同然に使えます。山小屋の従業員さん達は入浴していたらしく洗い髪をなびかせていました。
あ〜あ 家を出てから今日で4日も入浴していません。うらやましいな〜!
夜遅く、寝ている布団の中から珍しい光景を見ました。床に近い所にあるカーテンのない窓から、遥か下の
山麓に雲海が見えます。しかも雲海の切れ間から下界の夜景が透き通るように見えています。海の底か
らホタルイカの光が輝いているみたいで神秘的な美しさでした。
翌朝(4日目)、私達は気合いを入れて午前4時10分頃 出発しました。朝食弁当は昨夜用意してもらい、詰
め込んでいました。マ○タケさんに ひと言お礼とお別れを言いたかったのですが、彼の姿は屋内には見当
たりませんでした。たぶんご自分のビューポイントへ ご来光を拝みに行かれたのでしょう。ちょっと残念でし
たが仕方がありません。長い〜間 お世話になった村営天狗山荘を後にヘットライトを照らしながら、天狗ノ
頭へと向かいました。
今度 この山小屋に訪れる機会があったら、お天気がいい時に天狗平周辺の眺めを堪能したいものです。
きっと田舎の実家に帰って来たような懐かしさを覚えると思います。あのストーブの温もり・・・忘れません!
(一部、イメージ画像あり)